弧状連結と連結の関係

弧状連結と連結の関係
弧状連結と連結について以下の関係が成り立つ。

(1)

位相空間\(\left(X,\mathcal{O}\right)\)が弧状連結ならば連結である。
逆は一般的に成り立たない。

(2)

位相空間\(\left(X,\mathcal{O}\right)\)が有限集合ならば弧状連結と連結は同値になる。

(3)

ユークリッド空間\(\left(\mathbb{R},d\right)\)の区間では弧状連結と連結は同値になる。

(4)

ユークリッド空間\(\left(\mathbb{R}^{n},d\right)\)の空でない開部分集合では弧状連結と連結は同値になる。

(1)

\(\Rightarrow\)

背理法で示す。
\(\left(X,\mathcal{O}\right)\)は弧状連結かつ非連結と仮定する。
非連結なので\(X\)の空でないある開集合\(O_{1},O_{2}\in\mathcal{O}\)が存在し、\(O_{1}\cup O_{2}=X\land O_{1}\cap O_{2}=\emptyset\)となる。
このとき、\(O_{1},O_{2}\)は空集合でないので\(x,y\in X\)を\(x\in O_{1},y\in O_{2}\)となるようにとれ、\(X\)は弧状連結なので、\(f:\left[0,1\right]\rightarrow X\)となる連続写像\(f\)が存在し、\(f\left(0\right)=x\in O_{1},f\left(1\right)=y\in O_{2}\)とする。
そうすると、\(f\)は連続写像なので\(f^{\bullet}\left(O_{1}\right),f^{\bullet}\left(O_{2}\right)\)は\(\left[0,1\right]\)の開集合となり、
\[ 0\in f^{\bullet}\left(O_{1}\right)\ne\emptyset,1\in f^{\bullet}\left(O_{2}\right)\ne\emptyset,f^{\bullet}\left(O_{1}\right)\cup f^{\bullet}\left(O_{2}\right)=f^{\bullet}\left(O_{1}\cup O_{2}\right)=f^{\bullet}\left(X\right)=\left[0,1\right],f^{\bullet}\left(O_{1}\right)\cap f^{\bullet}\left(O_{2}\right)=f^{\bullet}\left(O_{1}\cap O_{2}\right)=f^{\bullet}\left(\emptyset\right)=\emptyset \] となるので、\(\left[0,1\right]\)は非連結となり矛盾。
故に\(\left(X,\mathcal{O}\right)\)は弧状連結ならば連結となる。

\(\Leftarrow\)は一般的に成り立たない

\(\mathbb{R}^{2}\)に通常位相\(\mathcal{O}\)を入れた位相空間\(\left(\mathbb{R}^{2},\mathcal{O}\right)\)を考える。
次の集合(原点抜き櫛空間)を考える。
\[ \begin{cases} A_{n} & =\left\{ \left(\frac{1}{n},y\right)\in\mathbb{R}^{2};0<y\leq1\right\} \\ A_{\infty} & =\left\{ \left(0,y\right)\in\mathbb{R}^{2};0<y\leq1\right\} \\ B & =\left\{ \left(x,0\right)\in\mathbb{R}^{2};0<x\leq1\right\} \end{cases} \] このとき、\(\left(\bigcup_{n\in\mathbb{N}}A_{n}\right)\cup B\)は弧状連結となり、弧状連結なので連結となる。
\(\left(\bigcup_{n\in\mathbb{N}}A_{n}\right)\cup B\)が連結なので、その閉包\(\left(\left(\bigcup_{n\in\mathbb{N}}A_{n}\right)\cup B\right)^{a}\)も連結となり、
\[ \left(\bigcup_{n\in\mathbb{N}}A_{n}\right)\cup B\subseteq A_{\infty}\cup\left(\bigcup_{n\in\mathbb{N}}A_{n}\right)\cup B\subseteq\left(\left(\bigcup_{n\in\mathbb{N}}A_{n}\right)\cup B\right)^{a} \] を満たすので、\(A_{\infty}\cup\left(\bigcup_{n\in\mathbb{N}}A_{n}\right)\cup B\)も連結となる。
しかし、\(\left(0,0\right)\notin A_{\infty}\cup\left(\bigcup_{n\in\mathbb{N}}A_{n}\right)\cup B\)なので、\(A_{\infty}\cup\left(\bigcup_{n\in\mathbb{N}}A_{n}\right)\cup B\)内を通る\(\left(0,1\right)\)から\(\left(1,0\right)\)への道は存在しないので弧状連結ではない。
故に\(\Leftarrow\)は一般的に成り立たない。

(1)-2

\(\Leftarrow\)は一般的に成り立たない

\(\mathbb{R}^{2}\)に通常位相\(\mathcal{O}\)を入れた位相空間\(\left(\mathbb{R}^{2},\mathcal{O}\right)\)を考える。
次の集合を考える。
\[ \begin{cases} A & =\left\{ \left(x,\sin\frac{1}{x}\right)\in\mathbb{R}^{2};0<x\leq1\right\} \\ A_{0} & =\left\{ \left(0,y\right)\in\mathbb{R}^{2};-1<y\leq1\right\} \end{cases} \] このとき、\(g\left(x\right)=\sin\frac{1}{x}\)とおくと、\(0<x\leq1\)で\(g\left(x\right)\)は連続である。

連結である

\(\left(0,1\right]\)は連結であるので連続写像\(g\left(x\right)\)の像も連結となるので、\(g\left(\left(0,1\right]\right)=A\)は連結となる。
また\(A_{0}\)も連結となる。
\(A\)の閉包\(A^{a}\)は\(A^{a}=A\cup A_{0}\)となり、\(A\)が連結なので\(A^{a}\)も連結となる。
この\(A^{a}\)は位相幾何学者の正弦曲線と呼ばれる。

弧状連結ではない

弧状連結であると仮定する。
このとき、ある連続写像\(f:\left[0,1\right]\rightarrow A\cup A_{0}\)が存在し、\(f\left(0\right)=\left(0,0\right),f\left(1\right)=\left(1,\sin1\right)\)を満たす。
ここで、\(t_{0}=\sup\left\{ t\in\left[0,1\right];f\left(t\right)=0\right\} \)とおくと、\(f\)は連続写像なので、ある\(\delta>0\)が存在し\(\left|t-t_{0}\right|<\delta\rightarrow d\left(f\left(t\right),f\left(t_{0}\right)\right)<1\)となる。
また、\(t_{0}<t\)では\(f\left(t\right)=\left(g\left(t\right),\sin\left(\frac{1}{g\left(t\right)}\right)\right)\)となる。
ここで、\(f\)は連続写像であるので、\(n\in\mathbb{N}\)を十分大きくとれば、
\[ 0=g\left(t_{0}\right)<\frac{1}{\frac{3}{2}\pi+2n\pi}<\frac{1}{\frac{1}{2}\pi+2n\pi}<g\left(t_{0}+\delta\right)\leq1 \] とできるので、\(t_{0}<\alpha<t_{0}+\delta\)を満たすある\(\alpha\)が存在し\(g\left(\alpha\right)=\frac{1}{\frac{3}{2}\pi+2n\pi}\)となり、同様に\(t_{0}<\beta<t_{0}+\delta\)を満たすある\(\beta\)が存在し\(g\left(\beta\right)=\frac{1}{\frac{1}{2}\pi+2n\pi}\)となる。
また、\(t_{0}<\alpha<t_{0}+\delta\)であるなら、\(\left|\alpha-t_{0}\right|<\delta\)となるので\(d\left(f\left(\alpha\right),f\left(t_{0}\right)\right)<1\)となる。
同様に\(t_{0}<\beta<t_{0}+\delta\)であるなら、\(d\left(f\left(\beta\right),f\left(t_{0}\right)\right)<1\)となる。
これより、
\begin{align*} d\left(f\left(\alpha\right),f\left(\beta\right)\right) & \leq d\left(f\left(a\right),f\left(t_{0}\right)\right)+d\left(f\left(t_{0}\right),f\left(\beta\right)\right)\\ & <1+1\\ & =2 \end{align*} となる。
しかし、
\begin{align*} d\left(f\left(\alpha\right),f\left(\beta\right)\right) & =d\left(\left(g\left(\alpha\right),\sin\left(\frac{1}{g\left(\alpha\right)}\right)\right),\left(g\left(\beta\right),\sin\left(\frac{1}{g\left(\beta\right)}\right)\right)\right)\\ & =\sqrt{\left(g\left(\alpha\right)-g\left(\beta\right)\right)^{2}+\left(\sin\left(\frac{1}{g\left(\alpha\right)}\right)-\sin\left(\frac{1}{g\left(\beta\right)}\right)\right)^{2}}\\ & =\sqrt{\left(g\left(\alpha\right)-g\left(\beta\right)\right)^{2}+\left(\sin\left(\frac{3}{2}\pi+2n\pi\right)-\sin\left(\frac{1}{2}\pi+2n\pi\right)\right)^{2}}\\ & =\sqrt{\left(g\left(\alpha\right)-g\left(\beta\right)\right)^{2}+\left(-1-1\right)^{2}}\\ & =\sqrt{\left(g\left(\alpha\right)-g\left(\beta\right)\right)^{2}+2^{2}}\\ & \geq2 \end{align*} となり矛盾。
従って、弧状連結であるという仮定が間違いで、背理法より弧状連結でないことが示される。
すなわち、\(A^{a}\)は原点\(\left(0,0\right)\)と\(A\)上の点を結ぶことは出来ないので弧状連結ではない。

-

これらより、\(A^{a}\)は連結であるが弧状連結ではないので\(\Leftarrow\)が成り立たない。

(2)

\(\Rightarrow\)

(1)より、位相空間があるとき、一般的に弧状連結ならば連結なので\(\Rightarrow\)が成り立つ。

\(\Leftarrow\)

対偶で示す。
位相空間\(\left(X,\mathcal{O}\right)\)が有限集合のとき、弧状連結でないならば連結でないを示せばよい。
弧状連結でないとき、ある全体集合\(X\)でない弧状連結成分\(\pi_{x}\)があり有限集合なので\(\pi_{x}\)は開集合かつ閉集合となる。
これより、空集合でも全体集合でもない開集合かつ閉集合となる部分集合\(\pi_{x}\)が存在するので\(X\)は非連結となり連結でない。
従って対偶が示されたので\(\Leftarrow\)が成り立つ。

\(\Leftrightarrow\)

これらより、\(\Rightarrow\)と\(\Leftarrow\)が成り立つので\(\Leftrightarrow\)が成り立つ。

(3)

\(\Rightarrow\)

(1)より、位相空間があるとき、一般的に弧状連結ならば連結なので\(\Rightarrow\)が成り立つ。

\(\Leftarrow\)

対偶で示す。
弧状連結でないならば連結でないを示せばいい。
区間\(A\subseteq\mathbb{R}\)をとる。
任意の\(a,b\in A\)に対し、写像を\(f:\left[0,1\right]\rightarrow A,t\mapsto f\left(t\right)=a-\left(a-b\right)t\)ととれば\(f\left(0\right)=a,f\left(1\right)=b\)となり\(f\)は連続写像であるので\(a,b\)は連続な道で繋がっていて\(A\)は弧状連結となる。
これより、区間\(A\)は常に弧状連結であり弧状連結でないことがないので、弧状連結でないならば連結でないが成り立つ。
従って対偶が成り立つので\(\Leftarrow\)が成り立つ。

\(\Leftrightarrow\)

これらより、\(\Rightarrow\)と\(\Leftarrow\)が成り立つので\(\Leftrightarrow\)が成り立つ。

(4)

\(\Rightarrow\)

(1)より、位相空間があるとき、一般的に弧状連結ならば連結なので\(\Rightarrow\)が成り立つ。

\(\Leftarrow\)

空でない連結な開集合を\(A\)として、元\(p\in A\)を選び、\(p\)の弧状連結成分を\(\pi_{p}\)として\(\pi_{p}'=\pi_{p}\cap A\)とすると\(\pi_{p}'\subseteq A\)となる。
このとき、ある\(\epsilon>0\)が存在し\(U_{\epsilon}\left(p\right)\subseteq A\)であれば\(r\in U_{\epsilon}\left(p\right)\)と\(p\)は弧状連結となる。
また、任意の\(q\in\pi_{p}'\)に対し、ある\(\epsilon>0\)が存在し、\(A\)は開集合なので\(U_{\epsilon}\left(q\right)\subseteq A\)を満たし、任意の\(r\in U_{\epsilon}\left(q\right)\)に対し、\(p,q\)は弧状連結で\(q,r\)も弧状連結なので\(p,r\)も弧状連結となる。
これより、\(U_{\epsilon}\left(q\right)\subseteq\pi_{p}'\)となり\(\pi_{p}'\)は開集合となる。
次に、任意の\(r\in A\setminus\pi_{p}'\)に対し、\(p,r\)は弧状連結ではない。
\(U_{\epsilon}\left(r\right)\cap\pi_{p}'\ne\emptyset\)と仮定すると、\(U_{\epsilon}\left(r\right)\cap\pi_{p}'\)に含まれる点と\(p\)とは弧状連結になるので\(p,r\)は弧状連結となり矛盾する。
従って、仮定が間違いで\(U_{\epsilon}\left(r\right)\cap\pi_{p}'=\emptyset\)となり、\(U_{\epsilon}\left(r\right)\subseteq\pi_{p}'^{c}\)となるので\(U_{\epsilon}\left(r\right)\cap A\subseteq\pi_{p}'^{c}\cap A=\pi_{p}'^{c}\)となり\(\pi_{p}'^{c}\)は開集合になるのでその補集合の\(\pi_{p}'\)は閉集合となる。
これらより、\(\pi_{p}'\)は\(A\)の部分集合\(\pi_{p}'\subseteq A\)であり、開集合かつ閉集合となり、\(p\)を含むので空集合ではない。
条件より\(A\)は連結であるので\(\pi_{p}'\)が\(A\)の真部分集合\(\pi_{p}'\subsetneq A\)とすると\(A\)は非連結となるので、\(A=\pi_{p}'\)とななるので\(A\)は弧状連結となる。
従って\(\Leftarrow\)が成り立つ。

\(\Leftrightarrow\)

これらより、\(\Rightarrow\)と\(\Leftarrow\)が成り立つので\(\Leftrightarrow\)が成り立つ。

ページ情報
タイトル
弧状連結と連結の関係
URL
https://www.nomuramath.com/vpueb63r/
SNSボタン