積み木の積み上げ問題
積み木の積み上げ問題
同じ大きさの直方体で幅2の積み木があります。
この積み木を\(m\)段倒さずに積み上げるには一番上の積み木と一番下の積み木との差は最大どこまでずらせるでしょうか?
また無限に積み上げるとどれだけずらせるでしょうか?
同じ大きさの直方体で幅2の積み木があります。
この積み木を\(m\)段倒さずに積み上げるには一番上の積み木と一番下の積み木との差は最大どこまでずらせるでしょうか?
また無限に積み上げるとどれだけずらせるでしょうか?
(0)
1番上の積み木を1段目として、上から数えるとする。このとき、\(m\)段目の位置を\(P_{m}\)で表し、1段目からn段目までの重心を\(G_{m}\)で表す。
そうすると、位置と重心の関係は、
\[ G_{m}=\frac{1}{m}\sum_{k=1}^{m}P_{k} \] となる。
1つの積み木の重心は幅が2なので左から1,右から1の位置である。
ある積み木より上にある積み木の重心がその積み木の幅の範囲に入っているとき倒れないので、倒れないための条件は
\[ P_{m+1}-1\leq G_{m}\leq P_{m+1}+1 \] となる。
ずらし方は右と左があるが、上にいくにつれて右にいくようにずらす。
そうすると一番右にずらすためには、
\[ G_{m}=P_{m+1}+1 \] となる。
位置と重心の関係より、\(G_{m}\)についての漸化式を作ると、
\begin{align*} \left(m+1\right)G_{m+1}-mG_{m} & =\sum_{k=1}^{m+1}P_{k}-\sum_{k=1}^{m}P_{k}\\ & =P_{m+1} \end{align*} となる。
これより、
\begin{align*} G_{m} & =P_{m+1}+1\\ & =\left(m+1\right)G_{m+1}-mG_{m}+1 \end{align*} となるので整理すると、
\[ G_{m+1}-G_{m}=\frac{-1}{m+1} \] となる。
漸化式を解くと、
\begin{align*} G_{m+1} & =G_{1}+\sum_{k=1}^{m}\left(G_{k+1}-G_{k}\right)\\ & =G_{1}-\sum_{k=1}^{m}\frac{1}{k+1}\\ & =P_{1}-\sum_{k=1}^{m}\frac{1}{k+1} \end{align*} となるので\(m+2\rightarrow m\)とおき\(P_{1}\)について解くと、
\begin{align*} P_{1} & =\sum_{k=1}^{m-2}\frac{1}{k+1}+G_{m-1}\\ & =\sum_{k=1}^{m-2}\frac{1}{k+1}+P_{m}+1\\ & =\sum_{k=0}^{m-2}\frac{1}{k+1}+P_{m}\\ & =\sum_{k=1}^{m-1}\frac{1}{k}+P_{m} \end{align*} となる。
これより、\(m\)段積んだとき、\(P_{1}-P_{m}\)が一番上と一番下とのずれになるので、
\[ P_{1}-P_{m}=\sum_{k=1}^{m-1}\frac{1}{k} \] となる。
ここで無限に積み重ねるとすると調和級数なので、
\begin{align*} P_{1}-P_{\infty} & =\sum_{k=1}^{\infty}\frac{1}{k}\\ & >\sum_{k=1}^{\infty}\frac{1}{2^{\left\lfloor \log_{2}k\right\rfloor }}\\ & =\sum_{j=1}^{\infty}\frac{\left(2^{j}-1\right)-2^{j-1}+1}{2^{j}}\\ & =j\sum\frac{2^{j-1}\left(2-1\right)}{2^{j}}\\ & =1+\sum_{k=1}^{\infty}2^{k-1}\frac{1}{2^{k}}\\ & =1+\sum_{k=1}^{\infty}\frac{1}{2}\\ & =\infty \end{align*} となり正の無限大に発散するので無限にずらせる。
これらより、\(m\)段重ねたとき、
\[ P_{1}-P_{m}=\sum_{k=1}^{m-1}\frac{1}{k} \] だけずらせることができて、無限に積み上げると、無限にずらせることができる。
(0)-2
具体的に順次求めてみる。1番上を1段目として、一番下の位置を0とする。
上に積むにつれて右にずらすようにする。
\(m\)段積んだときに上から積み木の中心の位置を\(\left(P_{1},P_{2},\cdots,P_{m}\right)\)で表すとする。
1段積んだときの各積み木の位置は\(\left(0\right)\)となり、重心は0となる。
2段積むときは1段積んだものの重心が1になるまで右に移動できるので右に1移動させて、各積み木の位置は\(\left(1,0\right)\)となり、重心は\(\frac{1}{2}\)となる。
3段積むときは2段積んだものの重心が1になるまで右に移動できるので右に\(1-\frac{1}{2}=\frac{1}{2}\)移動させて、各積み木の位置は\(\left(1+\frac{1}{2},\frac{1}{2},0\right)\)となり、重心は\(\frac{1}{3}\left(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+0\right)=\frac{2}{3}\)となる。
4段積むときは3段積んだものの重心が1になるまで右に移動できるので右に\(1-\frac{2}{3}=\frac{1}{3}\)移動させて、各積み木の位置は\(\left(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3},\frac{1}{2}+\frac{1}{3},\frac{1}{3},0\right)\)となり、重心は\(\frac{1}{4}\left(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{3}+0\right)=\frac{3}{4}\)となる。
5段積むときは4段積んだものの重心が1になるまで右に移動できるので右に\(1-\frac{3}{4}=\frac{1}{4}\)移動させて、各積み木の位置は\(\left(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4},\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4},\frac{1}{3}+\frac{1}{4},\frac{1}{4},0\right)\)となり、重心は\(\frac{1}{5}\left(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{4}+0\right)=\frac{4}{5}\)となる。
これを繰り返すと\(m\)段積むときは\(m-1\)段積んだものの重心が1になるまで右に移動できるので右に\(1-\frac{m-2}{m-1}=\frac{1}{m-1}\)移動させて、各積み木の位置は\(\left(1+\frac{1}{2}+\cdots+\frac{1}{m-1},\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots+\frac{1}{m-1},\cdots,\frac{1}{m-1},0\right)\)となり、重心は\(\frac{1}{m}\left(1+\frac{1}{2}+\cdots+\frac{1}{m-1}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots+\frac{1}{m-1}+\cdots+\frac{1}{m-1},0\right)=\frac{m-1}{m}\)となる。
従って\(m\)段積むと、1番上の積み木の位置は
\[ 1+\frac{1}{2}+\cdots+\frac{1}{m-1}=\sum_{k=1}^{m-1}\frac{1}{k} \] となるので、これだけずらせることができる。
またこの和は\(m\rightarrow\infty\)とすると調和級数となり調和級数は正の無限大に発散するので、無限に上に積み上げると無限にずらすことができる。
ページ情報
タイトル | 積み木の積み上げ問題 |
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