トービンの分離定理の解説
トービンの分離定理の解説
リスク資産と無リスク資産があるとき、個々の銘柄の期待リターンと分散と共分散のみからどのようにポートフォリオを組めばいいのかを考えます。
まずはリスク資産と無リスク資産とに分けて考えます。
リスク資産は簡単のために証券\(A,B\)の2種類として、リターンを\(R_{A},R_{B}\)、期待リターンをそれぞれ\(E\left[R_{A}\right],E\left[R_{B}\right]\)として標準偏差をそれぞれ\(\sigma\left[R_{A}\right],\sigma\left[R_{B}\right]\)とする。
このとき、証券\(A,B\)の割合を空売りなしで\(w_{A}+w_{B}=1,0\leq w_{A},0\leq w_{B}\)として\(w_{A},w_{B}\)とすると、このポートフォリオを\(C\)とすると、期待リターンと標準偏差は、
\begin{align*} E\left[R_{c}\right] & =E\left[R_{A}w_{A}+R_{B}w_{B}\right]\\ & =E\left[R_{A}\right]w_{A}+E\left[R_{B}\right]w_{B} \end{align*} \begin{align*} \sigma\left[R_{C}\right] & =\sqrt{V\left[R_{C}\right]}\\ & =\sqrt{V\left[R_{A}w_{A}+R_{B}w_{B}\right]}\\ & =\sqrt{w_{A}^{2}V\left[R_{A}\right]+w_{B}^{2}V\left[R_{B}\right]+2w_{A}w_{B}Cov\left[R_{A},R_{B}\right]}\\ & =\sqrt{w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+w_{B}^{2}\sigma_{B}^{2}+2w_{A}w_{B}\sigma_{AB}}\\ & =\sqrt{w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+w_{B}^{2}\sigma_{B}^{2}+2w_{A}w_{B}\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}\\ & \leq\sqrt{w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+w_{B}^{2}\sigma_{B}^{2}+2w_{A}w_{B}\sigma_{A}\sigma_{B}}\cmt{\because-1\leq\rho_{AB}\leq1,0\leq w_{A},0\leq w_{B}}\\ & =\left|\left(w_{A}\sigma_{A}+w_{B}\sigma_{B}\right)\right|\\ & =w_{A}\sigma_{A}+w_{B}\sigma_{B} \end{align*} となる。
等号は\(\rho_{AB}=1\)または\(w_{A}=1\lor w_{B}=1\)のときである。
これより、相関係数が1以外のときは2つの証券を組み合わせることにより、標準偏差を単純な平均よりも小さくすることができ、これを分散効果という。
また、\(w_{A}<0\lor w_{B}<0\)のときは、空売りの金利がかかりますが一定なので標準偏差には影響せず、
\begin{align*} \sigma\left[R_{C}\right] & =\sqrt{V\left[R_{C}\right]}\\ & =\sqrt{w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+w_{B}^{2}\sigma_{B}^{2}+2w_{A}w_{B}\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}\\ & \geq\sqrt{w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+w_{B}^{2}\sigma_{B}^{2}+2w_{A}w_{B}\sigma_{A}\sigma_{B}}\cmt{\because-1\leq\rho_{AB}\leq1,w_{A}w_{B}<0}\\ & =\sqrt{\left(w_{A}\sigma_{A}+w_{B}\sigma_{B}\right)^{2}}\\ & =\left|\left(w_{A}\sigma_{A}+w_{B}\sigma_{B}\right)\right|\\ & =w_{A}\sigma_{A}+w_{B}\sigma_{B} \end{align*} となり、等号は\(\rho_{AB}=1\)のときである。
これは\(A,B\)のどちらかを空売りをすることに相当し、分散は単純な平均よりも大きくなるので分散効果がなくなることを表している。
簡単にするために証券\(A,B\)のみで考えたが、沢山の証券を組み合わせたポートフォリオの場合でも標準偏差・期待リターン平面で考えると、同じ期待リターンなら標準偏差が少ないほうがいいので、同じ期待リターンのうちで一番標準偏差が小さい点が実際に選ばれる候補となり、期待リターンごとのその点を繋ぎ合わせると曲線となり、この曲線を効率的フロンティア(有効フロンティア)という。
次は効率的フロンティアの中から点を選びポートフォリオ\(C\)を決める。
無リスク資産の期待リターンを\(r_{f}\),標準偏差を0として、ポートフォリオ\(C\)と無リスク資産の割合を\(w_{c}+w_{f}=1\)として\(w_{c},w_{f}\)とすると、ポートフォリオ\(D\)の期待リターンと分散は、
\begin{align*} E\left[R_{D}\right] & =E\left[R_{C}w_{C}+r_{f}w_{f}\right]\\ & =E\left[R_{C}\right]w_{C}+r_{f}w_{f} \end{align*} \begin{align*} V\left[R_{D}\right] & =V\left[R_{C}w_{C}+r_{f}w_{f}\right]\\ & =w_{C}^{2}V\left[R_{C}\right]+w_{f}^{2}V\left[r_{f}\right]+2w_{C}w_{f}Cov\left[R_{C},r_{f}\right]\\ & =w_{C}^{2}\sigma_{C}^{2} \end{align*} となる。
これより、リスク・リターン(標準偏差・期待リターン)平面でポートフォリオ\(C\)と無リスク資産を表す点を直線で結んだ線上にポートフォリオ\(D\)がある。
標準偏差が小さく、期待リターンが大きいほどいいポートフォリオとなるので、この直線の傾きが大きいほどポートフォリオ\(C\)と無リスク資産の割合がいいということである。
ポートフォリオ\(D\)では無リスク資産を表す点を通り効率的フロンティアと接する直線が傾きが最大になり、この直線と効率的フロンティア上の接する点を接点ポートフォリオといい、この接点ポートフォリオに対応するポートフォリオ\(C\)が存在する。
また、無リスク資産の点と接点ポートフォリオを結んだ直線を資本市場線という。
これより、接点ポートフォリオは効率的フロンティアと資本市場線の接点なのでリスク資産で構成されるポートフォリオ\(C\)を組むときにリスクとリターンの面から1番効率のいいポートフォリオ\(C\)ということになる。
これでポートフォリオ\(C\)が決まったので、あとはポートフォリオ\(C\)と無リスク資産の割合を決めポートフォリオ\(D\)にすればいい。
ポートフォリオ\(C\)と無リスク資産の割合は\(w_{c}+w_{f}=1\)であればいいので、無リスク資産の割合をマイナス、すなわち借金をしてポートフォリオ\(C\)に回すことも可能ということになる。
この資本市場線上の点は無リスク資産と接点ポートフォリオを結んだ線上の点なのでリスクに対してリターンがいいので、この資本市場線上からどの程度のリスクをとれるかを元にポートフォリオ\(D\)を選べばいい。
まとめると、ポートフォリオ\(C\)を構成する証券と無リスク資産のリスク・リターンから資本市場線が引けて接点ポートフォリオが決まります。
この接点ポートフォリオはポートフォリオ\(C\)を構成する証券のリスクに対してリターンの大きい証券の配分なのでポートフォリオ\(C\)が決まります。
そして、実際のリスク・リターンはポートフォリオ\(C\)と無リスク資産の割合で決めればいいということである。
このようにリスク資産からなる接点ポートフォリオを決めることと、接点ポートフォリオと無リスク資産の割合を決めることは分離ができることをトービンの分離定理という。
\[ S=\frac{E\left[R\right]-r_{f}}{\sigma\left[R\right]} \] が一定の直線は無リスク資産の点\(\left(0,r_{f}\right)\)を通る直線であり、効率的フロンティアを通る直線の傾きが最大になる直線が資本市場線であるので、資本市場線上にある点はシャープレシオが最大になる点でもある。
そこで、効率的フロンティア上の点からポートフォリオを選ぶときに期待リターンは無視をしてリスクのみを考え、効率的フロンティア上から標準偏差が最小となる点を選ぶこともあります。
この標準偏差が最小となるポートフォリオを最小分散ポートフォリオといいます。
・リスク資産からなる接点ポートフォリオを決める
・無リスク資産と接点ポートフォリオの配分でリスクを決める
の2つは分離ができるという定理である。
接点ポートフォリオを決めれば、あとは無リスク資産と接点ポートフォリオの配分だけを決めればいいということである。
\[ z=-\frac{1}{2}\cdot\frac{\sigma_{A}^{2}-\sigma_{B}^{2}}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}+\frac{1}{2} \] として、
\[ w_{A}=\begin{cases} 0 & z\leq0\\ z & 0<z<1\\ 1 & 1\leq z \end{cases} \] となる。
証明は次のようになる。
\(A,B\)を組み合わせたポートフォリオの分散は、
\begin{align*} \sigma^{2} & =w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+w_{B}^{2}\sigma_{B}^{2}+2w_{A}w_{B}\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\\ & =w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+\left(1-w_{A}\right)^{2}\sigma_{B}^{2}+2w_{A}\left(1-w_{A}\right)\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\\ & =w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+\left(1-2w_{A}+w_{A}^{2}\right)\sigma_{B}^{2}+2w_{A}\left(1-w_{A}\right)\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\\ & =\left(\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\right)w_{A}^{2}+2\sigma_{B}\left(\rho_{AB}\sigma_{A}-\sigma_{B}\right)w_{A}+\sigma_{B}^{2}\\ & =\left(\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\right)\left(w_{A}+\frac{\sigma_{B}\left(\rho_{AB}\sigma_{A}-\sigma_{B}\right)}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}\right)^{2}-\frac{\sigma_{B}^{2}\left(\rho_{AB}\sigma_{A}-\sigma_{B}\right)^{2}}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}+\sigma_{B}^{2}\\ & =\left(\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\right)\left(w_{A}+\frac{1}{2}\cdot\frac{\sigma_{A}^{2}-\sigma_{B}^{2}-\left(\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\right)}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}\right)^{2}-\frac{\sigma_{B}^{2}\left(\rho_{AB}\sigma_{A}-\sigma_{B}\right)^{2}}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}+\sigma_{B}^{2}\\ & =\left(\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\right)\left(w_{A}+\frac{1}{2}\cdot\frac{\sigma_{A}^{2}-\sigma_{B}^{2}}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}-\frac{1}{2}\right)^{2}-\frac{\sigma_{B}^{2}\left(\rho_{AB}\sigma_{A}-\sigma_{B}\right)^{2}}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}+\sigma_{B}^{2} \end{align*} となり、\(-1\leq\rho_{AB}\leq1\)なので、
\[ \sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\sigma_{A}\sigma_{B}\leq\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\leq\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}+2\sigma_{A}\sigma_{B} \] となり、
\[ \left(\sigma_{A}-\sigma_{B}\right)^{2}\leq\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\leq\left(\sigma_{A}+\sigma_{B}\right)^{2} \] となるので、
\[ 0\leq\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B} \] より、\(\sigma^{2}\)は\(w_{A}\)に関して下に凸となる。
また、
\[ z=-\frac{1}{2}\cdot\frac{\sigma_{A}^{2}-\sigma_{B}^{2}}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}+\frac{1}{2} \] とおくと、\(0\leq w_{A}\leq1\)なので、\(\sigma\)が最小となる\(w_{A}\)は
\[ w_{A}=\begin{cases} 0 & z\leq0\\ z & 0<z<1\\ 1 & 1\leq z \end{cases} \] となる。
リスク資産と無リスク資産があるとき、個々の銘柄の期待リターンと分散と共分散のみからどのようにポートフォリオを組めばいいのかを考えます。
まずはリスク資産と無リスク資産とに分けて考えます。
リスク資産は簡単のために証券\(A,B\)の2種類として、リターンを\(R_{A},R_{B}\)、期待リターンをそれぞれ\(E\left[R_{A}\right],E\left[R_{B}\right]\)として標準偏差をそれぞれ\(\sigma\left[R_{A}\right],\sigma\left[R_{B}\right]\)とする。
このとき、証券\(A,B\)の割合を空売りなしで\(w_{A}+w_{B}=1,0\leq w_{A},0\leq w_{B}\)として\(w_{A},w_{B}\)とすると、このポートフォリオを\(C\)とすると、期待リターンと標準偏差は、
\begin{align*} E\left[R_{c}\right] & =E\left[R_{A}w_{A}+R_{B}w_{B}\right]\\ & =E\left[R_{A}\right]w_{A}+E\left[R_{B}\right]w_{B} \end{align*} \begin{align*} \sigma\left[R_{C}\right] & =\sqrt{V\left[R_{C}\right]}\\ & =\sqrt{V\left[R_{A}w_{A}+R_{B}w_{B}\right]}\\ & =\sqrt{w_{A}^{2}V\left[R_{A}\right]+w_{B}^{2}V\left[R_{B}\right]+2w_{A}w_{B}Cov\left[R_{A},R_{B}\right]}\\ & =\sqrt{w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+w_{B}^{2}\sigma_{B}^{2}+2w_{A}w_{B}\sigma_{AB}}\\ & =\sqrt{w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+w_{B}^{2}\sigma_{B}^{2}+2w_{A}w_{B}\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}\\ & \leq\sqrt{w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+w_{B}^{2}\sigma_{B}^{2}+2w_{A}w_{B}\sigma_{A}\sigma_{B}}\cmt{\because-1\leq\rho_{AB}\leq1,0\leq w_{A},0\leq w_{B}}\\ & =\left|\left(w_{A}\sigma_{A}+w_{B}\sigma_{B}\right)\right|\\ & =w_{A}\sigma_{A}+w_{B}\sigma_{B} \end{align*} となる。
等号は\(\rho_{AB}=1\)または\(w_{A}=1\lor w_{B}=1\)のときである。
これより、相関係数が1以外のときは2つの証券を組み合わせることにより、標準偏差を単純な平均よりも小さくすることができ、これを分散効果という。
また、\(w_{A}<0\lor w_{B}<0\)のときは、空売りの金利がかかりますが一定なので標準偏差には影響せず、
\begin{align*} \sigma\left[R_{C}\right] & =\sqrt{V\left[R_{C}\right]}\\ & =\sqrt{w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+w_{B}^{2}\sigma_{B}^{2}+2w_{A}w_{B}\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}\\ & \geq\sqrt{w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+w_{B}^{2}\sigma_{B}^{2}+2w_{A}w_{B}\sigma_{A}\sigma_{B}}\cmt{\because-1\leq\rho_{AB}\leq1,w_{A}w_{B}<0}\\ & =\sqrt{\left(w_{A}\sigma_{A}+w_{B}\sigma_{B}\right)^{2}}\\ & =\left|\left(w_{A}\sigma_{A}+w_{B}\sigma_{B}\right)\right|\\ & =w_{A}\sigma_{A}+w_{B}\sigma_{B} \end{align*} となり、等号は\(\rho_{AB}=1\)のときである。
これは\(A,B\)のどちらかを空売りをすることに相当し、分散は単純な平均よりも大きくなるので分散効果がなくなることを表している。
簡単にするために証券\(A,B\)のみで考えたが、沢山の証券を組み合わせたポートフォリオの場合でも標準偏差・期待リターン平面で考えると、同じ期待リターンなら標準偏差が少ないほうがいいので、同じ期待リターンのうちで一番標準偏差が小さい点が実際に選ばれる候補となり、期待リターンごとのその点を繋ぎ合わせると曲線となり、この曲線を効率的フロンティア(有効フロンティア)という。
次は効率的フロンティアの中から点を選びポートフォリオ\(C\)を決める。
無リスク資産の期待リターンを\(r_{f}\),標準偏差を0として、ポートフォリオ\(C\)と無リスク資産の割合を\(w_{c}+w_{f}=1\)として\(w_{c},w_{f}\)とすると、ポートフォリオ\(D\)の期待リターンと分散は、
\begin{align*} E\left[R_{D}\right] & =E\left[R_{C}w_{C}+r_{f}w_{f}\right]\\ & =E\left[R_{C}\right]w_{C}+r_{f}w_{f} \end{align*} \begin{align*} V\left[R_{D}\right] & =V\left[R_{C}w_{C}+r_{f}w_{f}\right]\\ & =w_{C}^{2}V\left[R_{C}\right]+w_{f}^{2}V\left[r_{f}\right]+2w_{C}w_{f}Cov\left[R_{C},r_{f}\right]\\ & =w_{C}^{2}\sigma_{C}^{2} \end{align*} となる。
これより、リスク・リターン(標準偏差・期待リターン)平面でポートフォリオ\(C\)と無リスク資産を表す点を直線で結んだ線上にポートフォリオ\(D\)がある。
標準偏差が小さく、期待リターンが大きいほどいいポートフォリオとなるので、この直線の傾きが大きいほどポートフォリオ\(C\)と無リスク資産の割合がいいということである。
ポートフォリオ\(D\)では無リスク資産を表す点を通り効率的フロンティアと接する直線が傾きが最大になり、この直線と効率的フロンティア上の接する点を接点ポートフォリオといい、この接点ポートフォリオに対応するポートフォリオ\(C\)が存在する。
また、無リスク資産の点と接点ポートフォリオを結んだ直線を資本市場線という。
これより、接点ポートフォリオは効率的フロンティアと資本市場線の接点なのでリスク資産で構成されるポートフォリオ\(C\)を組むときにリスクとリターンの面から1番効率のいいポートフォリオ\(C\)ということになる。
これでポートフォリオ\(C\)が決まったので、あとはポートフォリオ\(C\)と無リスク資産の割合を決めポートフォリオ\(D\)にすればいい。
ポートフォリオ\(C\)と無リスク資産の割合は\(w_{c}+w_{f}=1\)であればいいので、無リスク資産の割合をマイナス、すなわち借金をしてポートフォリオ\(C\)に回すことも可能ということになる。
この資本市場線上の点は無リスク資産と接点ポートフォリオを結んだ線上の点なのでリスクに対してリターンがいいので、この資本市場線上からどの程度のリスクをとれるかを元にポートフォリオ\(D\)を選べばいい。
まとめると、ポートフォリオ\(C\)を構成する証券と無リスク資産のリスク・リターンから資本市場線が引けて接点ポートフォリオが決まります。
この接点ポートフォリオはポートフォリオ\(C\)を構成する証券のリスクに対してリターンの大きい証券の配分なのでポートフォリオ\(C\)が決まります。
そして、実際のリスク・リターンはポートフォリオ\(C\)と無リスク資産の割合で決めればいいということである。
このようにリスク資産からなる接点ポートフォリオを決めることと、接点ポートフォリオと無リスク資産の割合を決めることは分離ができることをトービンの分離定理という。
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シャープレシオ\[ S=\frac{E\left[R\right]-r_{f}}{\sigma\left[R\right]} \] が一定の直線は無リスク資産の点\(\left(0,r_{f}\right)\)を通る直線であり、効率的フロンティアを通る直線の傾きが最大になる直線が資本市場線であるので、資本市場線上にある点はシャープレシオが最大になる点でもある。
最小分散ポートフォリオ
接点ポートフォリオを求めるには各銘柄の期待リターンと標準偏差と銘柄同士の相関係数が必要ですが、期待リターンはその年によってかなり違ってくるので過去のデーターから予想してもあまり当てにはできません。そこで、効率的フロンティア上の点からポートフォリオを選ぶときに期待リターンは無視をしてリスクのみを考え、効率的フロンティア上から標準偏差が最小となる点を選ぶこともあります。
この標準偏差が最小となるポートフォリオを最小分散ポートフォリオといいます。
トービンの分離定理(2基金分離定理)
ポートフォリオを決定するとき、リスク資産と無リスク資産があるならば、・リスク資産からなる接点ポートフォリオを決める
・無リスク資産と接点ポートフォリオの配分でリスクを決める
の2つは分離ができるという定理である。
接点ポートフォリオを決めれば、あとは無リスク資産と接点ポートフォリオの配分だけを決めればいいということである。
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証券\(A,B\)の標準偏差をそれぞれ\(\sigma_{A},\sigma_{B}\)、相関係数を\(\rho_{AB}\)として割合を\(w_{A},w_{B},w_{A}+w_{B}=1\)とすると、\(A,B\)を組み合わせたポートフォリオの分散が最小になる\(w_{A}\)は\[ z=-\frac{1}{2}\cdot\frac{\sigma_{A}^{2}-\sigma_{B}^{2}}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}+\frac{1}{2} \] として、
\[ w_{A}=\begin{cases} 0 & z\leq0\\ z & 0<z<1\\ 1 & 1\leq z \end{cases} \] となる。
証明は次のようになる。
\(A,B\)を組み合わせたポートフォリオの分散は、
\begin{align*} \sigma^{2} & =w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+w_{B}^{2}\sigma_{B}^{2}+2w_{A}w_{B}\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\\ & =w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+\left(1-w_{A}\right)^{2}\sigma_{B}^{2}+2w_{A}\left(1-w_{A}\right)\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\\ & =w_{A}^{2}\sigma_{A}^{2}+\left(1-2w_{A}+w_{A}^{2}\right)\sigma_{B}^{2}+2w_{A}\left(1-w_{A}\right)\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\\ & =\left(\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\right)w_{A}^{2}+2\sigma_{B}\left(\rho_{AB}\sigma_{A}-\sigma_{B}\right)w_{A}+\sigma_{B}^{2}\\ & =\left(\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\right)\left(w_{A}+\frac{\sigma_{B}\left(\rho_{AB}\sigma_{A}-\sigma_{B}\right)}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}\right)^{2}-\frac{\sigma_{B}^{2}\left(\rho_{AB}\sigma_{A}-\sigma_{B}\right)^{2}}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}+\sigma_{B}^{2}\\ & =\left(\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\right)\left(w_{A}+\frac{1}{2}\cdot\frac{\sigma_{A}^{2}-\sigma_{B}^{2}-\left(\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\right)}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}\right)^{2}-\frac{\sigma_{B}^{2}\left(\rho_{AB}\sigma_{A}-\sigma_{B}\right)^{2}}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}+\sigma_{B}^{2}\\ & =\left(\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\right)\left(w_{A}+\frac{1}{2}\cdot\frac{\sigma_{A}^{2}-\sigma_{B}^{2}}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}-\frac{1}{2}\right)^{2}-\frac{\sigma_{B}^{2}\left(\rho_{AB}\sigma_{A}-\sigma_{B}\right)^{2}}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}+\sigma_{B}^{2} \end{align*} となり、\(-1\leq\rho_{AB}\leq1\)なので、
\[ \sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\sigma_{A}\sigma_{B}\leq\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\leq\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}+2\sigma_{A}\sigma_{B} \] となり、
\[ \left(\sigma_{A}-\sigma_{B}\right)^{2}\leq\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}\leq\left(\sigma_{A}+\sigma_{B}\right)^{2} \] となるので、
\[ 0\leq\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B} \] より、\(\sigma^{2}\)は\(w_{A}\)に関して下に凸となる。
また、
\[ z=-\frac{1}{2}\cdot\frac{\sigma_{A}^{2}-\sigma_{B}^{2}}{\sigma_{A}^{2}+\sigma_{B}^{2}-2\rho_{AB}\sigma_{A}\sigma_{B}}+\frac{1}{2} \] とおくと、\(0\leq w_{A}\leq1\)なので、\(\sigma\)が最小となる\(w_{A}\)は
\[ w_{A}=\begin{cases} 0 & z\leq0\\ z & 0<z<1\\ 1 & 1\leq z \end{cases} \] となる。
証券\(A\)の期待リターンを100、標準偏差を10、証券\(B\)の期待リターンを200、標準偏差を20として証券\(A,B\)の相関係数を\(\rho_{AB}\)とする。
証券\(A\)と証券\(B\)でポートフォリオ\(C\)を組み、証券\(A\)の割合を\(w_{A}\)、証券\(B\)の割合を\(w_{B}\)とすると\(w_{A}+w_{B}=1\)となる。
このときの期待値\(R\)と標準偏差\(\sigma\)は次のようになる。
\[ \begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|} \hline w_{A} & 1.0 & 0.9 & 0.8 & 0.7 & 0.6 & 0.5 & 0.4 & 0.3 & 0.2 & 0.1 & 0.0\\ \hline w_{B} & 0.0 & 0.1 & 0.2 & 0.3 & 0.4 & 0.5 & 0.6 & 0.7 & 0.8 & 0.9 & 1.0\\ \hline E\left[R_{C}\right] & 100 & 110 & 120 & 130 & 140 & 150 & 160 & 170 & 180 & 190 & 200\\ \hline \sigma\left[R_{A}\right]w_{A}+\sigma\left[R_{B}\right]w_{B} & 10 & 11 & 12 & 13 & 14 & 15 & 16 & 17 & 18 & 19 & 20\\ \hline \rho_{AB}=1,\sigma\left[R_{C}\right] & *10.0 & 11.0 & 12.0 & 13.0 & 14.0 & 15.0 & 16.0 & 17.0 & 18.0 & 19.0 & 20.0\\ \hline \rho_{AB}=0.8,\sigma\left[R_{C}\right] & *10.0 & 10.7 & 11.5 & 12.3 & 13.3 & 14.3 & 15.4 & 16.5 & 17.6 & 18.9 & 20.0\\ \hline \rho_{AB}=0.5,\sigma\left[R_{C}\right] & *10.0 & 10.1 & 10.6 & 11.3 & 12.2 & 13.2 & 14.4 & 15.7 & 17.1 & 18.6 & 20.0\\ \hline \rho_{AB}=0.2,\sigma\left[R_{C}\right] & 10.0 & *9.60 & 9.63 & 10.1 & 10.9 & 12.0 & 13.4 & 14.9 & 16.5 & 18.2 & 20.0\\ \hline \rho_{AB}=0,\sigma\left[R_{C}\right] & 10.0 & 9.22 & *8.94 & 9.22 & 10.0 & 11.2 & 12.6 & 14.3 & 16.1 & 18.0 & 20.0\\ \hline \rho_{AB}=-0.5,\sigma\left[R_{C}\right] & 10.0 & 8.19 & 6.93 & *6.56 & 7.21 & 8.66 & 10.6 & 12.8 & 15.1 & 17.6 & 20.0\\ \hline \rho_{AB}=-1,\sigma\left[R_{C}\right] & 10.0 & 7.00 & 4.00 & *1.00 & 2.00 & 5.00 & 8.00 & 11.0 & 14.0 & 17.0 & 20.0 \\\hline \end{array} \] \(0\leq w_{A}\leq1\)となる全ての\(w_{A}\)において、\(\sigma\left[R_{C}\right]\leq\sigma\left[R_{A}\right]w_{A}+\sigma\left[R_{B}\right]w_{B}\)となっている。
米印は\(w_{A},w_{B}\)を0.1ずつ動かしたときの最小となる標準偏差である。
証券\(A\)と証券\(B\)でポートフォリオ\(C\)を組み、証券\(A\)の割合を\(w_{A}\)、証券\(B\)の割合を\(w_{B}\)とすると\(w_{A}+w_{B}=1\)となる。
このときの期待値\(R\)と標準偏差\(\sigma\)は次のようになる。
\[ \begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|} \hline w_{A} & 1.0 & 0.9 & 0.8 & 0.7 & 0.6 & 0.5 & 0.4 & 0.3 & 0.2 & 0.1 & 0.0\\ \hline w_{B} & 0.0 & 0.1 & 0.2 & 0.3 & 0.4 & 0.5 & 0.6 & 0.7 & 0.8 & 0.9 & 1.0\\ \hline E\left[R_{C}\right] & 100 & 110 & 120 & 130 & 140 & 150 & 160 & 170 & 180 & 190 & 200\\ \hline \sigma\left[R_{A}\right]w_{A}+\sigma\left[R_{B}\right]w_{B} & 10 & 11 & 12 & 13 & 14 & 15 & 16 & 17 & 18 & 19 & 20\\ \hline \rho_{AB}=1,\sigma\left[R_{C}\right] & *10.0 & 11.0 & 12.0 & 13.0 & 14.0 & 15.0 & 16.0 & 17.0 & 18.0 & 19.0 & 20.0\\ \hline \rho_{AB}=0.8,\sigma\left[R_{C}\right] & *10.0 & 10.7 & 11.5 & 12.3 & 13.3 & 14.3 & 15.4 & 16.5 & 17.6 & 18.9 & 20.0\\ \hline \rho_{AB}=0.5,\sigma\left[R_{C}\right] & *10.0 & 10.1 & 10.6 & 11.3 & 12.2 & 13.2 & 14.4 & 15.7 & 17.1 & 18.6 & 20.0\\ \hline \rho_{AB}=0.2,\sigma\left[R_{C}\right] & 10.0 & *9.60 & 9.63 & 10.1 & 10.9 & 12.0 & 13.4 & 14.9 & 16.5 & 18.2 & 20.0\\ \hline \rho_{AB}=0,\sigma\left[R_{C}\right] & 10.0 & 9.22 & *8.94 & 9.22 & 10.0 & 11.2 & 12.6 & 14.3 & 16.1 & 18.0 & 20.0\\ \hline \rho_{AB}=-0.5,\sigma\left[R_{C}\right] & 10.0 & 8.19 & 6.93 & *6.56 & 7.21 & 8.66 & 10.6 & 12.8 & 15.1 & 17.6 & 20.0\\ \hline \rho_{AB}=-1,\sigma\left[R_{C}\right] & 10.0 & 7.00 & 4.00 & *1.00 & 2.00 & 5.00 & 8.00 & 11.0 & 14.0 & 17.0 & 20.0 \\\hline \end{array} \] \(0\leq w_{A}\leq1\)となる全ての\(w_{A}\)において、\(\sigma\left[R_{C}\right]\leq\sigma\left[R_{A}\right]w_{A}+\sigma\left[R_{B}\right]w_{B}\)となっている。
米印は\(w_{A},w_{B}\)を0.1ずつ動かしたときの最小となる標準偏差である。
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タイトル | トービンの分離定理の解説 |
URL | https://www.nomuramath.com/sa4mn8qo/ |
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オプション価格の2項1期間モデル
\[
C\left(0\right)=\frac{1}{r}\left(p_{u}C_{u}+p_{d}C_{d}\right)
\]
CAPMの証明
\[
\beta_{A}=\rho_{AM}\frac{\sigma_{A}}{\sigma_{M}}
\]
株価とマーケットポートフォリオからベータ値を求める
運用による資産推移
\[
x=\begin{cases}
\left(x_{0}+\frac{b}{\log a}\right)a^{t}-\frac{b}{\log a} & a\ne1\\
x_{0}+bt & a=1
\end{cases}
\]