5心(重心・内心・外心・垂心・傍心)の定義と存在性

5心(重心・内心・外心・垂心・傍心)の定義と存在性

5心(重心・内心・外心・垂心・傍心)の定義
3角形の5心(重心・内心・外心・垂心・傍心)を次で定義する。

(1)重心

3本の中線の交点を重心といい\(G\)で表す

(2)垂心

各頂点からその対辺に下ろした垂線の交点を垂心といい\(H\)で表す

(3)内心

各頂点の2等分線の交点を内心といい\(I\)で表す。

(4)外心

各辺の垂直2等分線の交点を外心といい\(J\)または\(O\)で表す。

(5)傍心(ぼうしん)

ある頂点の内角の2等分線と他の2頂点の外角の2等分線の交点を傍心といい\(I_{a},I_{b},I_{c}\)で表す。


5心(重心・内心・外心・垂心・傍心)の存在性
5心(重心・内心・外心・垂心・傍心)は必ず存在する。
この5つ(重心・内心・外心・垂心・傍心)を5心という。

存在性の証明

(1)重心の存在性

3角形\(ABC\)があり、辺\(BC\)の中点を\(P\)、辺\(CA\)の中点を\(Q\)、辺\(AB\)の中点を\(R\)とすると、\(AP,BQ,CR\)が1点で交わることを示す。
このとき、\(P\)は辺\(BC\)の中点なので\(\left|BP\right|=\left|PC\right|\)となり、同様に\(Q\)は辺\(CA\)の中点なので\(\left|CQ\right|=\left|QA\right|\)となり、\(R\)は辺\(AB\)の中点なので\(\left|AR\right|=\left|RB\right|\)となる。
これより、
\[ \frac{\left|AR\right|}{\left|RB\right|}\cdot\frac{\left|BP\right|}{\left|PC\right|}\cdot\frac{\left|CQ\right|}{\left|QA\right|}=1 \] となりチェバの定理の逆が成り立つ。
従って、\(AP,BQ,CR\)は1点で交わるか平行であり、平行ではないので1点で交わり、重心が存在する。

(2)垂心の存在性

3角形\(ABC\)が直角3角形の場合は直角である頂点が垂心となる。
次に3角形\(ABC\)が直角3角形でない場合について垂心が存在することを示す。
頂点\(A\)から辺\(BC\)に下した垂線の足を\(P\)、頂点\(B\)から辺\(BC\)に下した垂線の足を\(Q\)、頂点\(C\)から辺\(AB\)に下した垂線の足を\(R\)とする。
このとき、\(\angle ABP=\angle B=\angle CBR\)かつ\(\angle APB=90^{\circ}=\angle CRB\)より3角形\(ABP\)と\(CBR\)は2角相当より相似\(\triangle ABP\sim\triangle CBR\)となる。
同様に\(\triangle BCQ\sim\triangle ACP\)と\(\triangle CAR\sim\triangle BAQ\)が成り立つ。
これより、
\[ \frac{\left|AB\right|}{\left|BP\right|}=\frac{\left|CB\right|}{\left|BR\right|} \] \[ \frac{\left|BC\right|}{\left|CQ\right|}=\frac{\left|AC\right|}{\left|CP\right|} \] \[ \frac{\left|CA\right|}{\left|AR\right|}=\frac{\left|BA\right|}{\left|AQ\right|} \] となる。
これを使うと、
\begin{align*} \frac{\left|AR\right|}{\left|RB\right|}\cdot\frac{\left|BP\right|}{\left|PC\right|}\cdot\frac{\left|CQ\right|}{\left|QA\right|} & =\frac{\left|AR\right|}{\left|QA\right|}\cdot\frac{\left|BP\right|}{\left|RB\right|}\cdot\frac{\left|CQ\right|}{\left|PC\right|}\\ & =\frac{\left|CA\right|}{\left|BA\right|}\cdot\frac{\left|AB\right|}{\left|CB\right|}\cdot\frac{\left|BC\right|}{\left|AC\right|}\\ & =1 \end{align*} となり、チェバの定理の逆が成り立つ。
従って、\(AP,BQ,CR\)は1点で交わるか平行であり、平行ではないので1点で交わり、垂心が存在する。
故に3角形\(ABC\)が直角3角形であるときも直角3角形でないときも垂心は存在する。

(3)内心の存在性

3角形\(ABC\)があり、角\(A\)の2等分線と辺\(BC\)の交点を\(P\)として、角\(B\)の2等分線と辺\(CA\)の交点を\(Q\)として、角\(C\)の2等分線と辺\(AB\)の交点を\(R\)とする。
このとき、点\(P\)は角\(A\)の2等分線と辺\(BC\)の交点なので、
\[ \frac{\left|BP\right|}{\left|PC\right|}=\frac{\left|BA\right|}{\left|AC\right|} \] となり、同様に、
\[ \frac{\left|CQ\right|}{\left|QA\right|}=\frac{\left|CB\right|}{\left|BA\right|} \] \[ \frac{\left|AR\right|}{\left|RB\right|}=\frac{\left|AC\right|}{\left|CB\right|} \] となる。
これを使うと、
\begin{align*} \frac{\left|AR\right|}{\left|RB\right|}\cdot\frac{\left|BP\right|}{\left|PC\right|}\cdot\frac{\left|CQ\right|}{\left|QA\right|} & =\frac{\left|AC\right|}{\left|CB\right|}\cdot\frac{\left|BA\right|}{\left|AC\right|}\cdot\frac{\left|CB\right|}{\left|BA\right|}\\ & =1 \end{align*} となり、チェバの定理の逆が成り立つ。
従って、\(AP,BQ,CR\)は1点で交わるか平行であり、平行ではないので1点で交わり、内心が存在する。

(4)外心の存在性

3角形\(ABC\)が直角3角形の場合は斜辺の中点が外心となる。
次に3角形\(ABC\)が直角3角形でない場合について外心が存在することを示す。
辺\(BC,CA,AB\)の中点をそれぞれ\(P,Q,R\)とする。
このとき、\(P\)は辺\(BC\)の中点であり、\(Q\)は辺\(CA\)の中点であるので、\(AB\)と\(QP\)は平行\(AB\parallel QP\)となり、同様に\(BC\parallel RQ\)と\(CA\parallel PR\)となる。
ここで3角形\(PQR\)について考える。
このとき、辺\(BC\)の垂直2等分線は\(P\)から辺\(QR\)に下ろした垂線と一致する。
同様に辺\(CA\)の垂直2等分線は\(Q\)から辺\(RP\)に下ろした垂線と一致し、辺\(AB\)の垂直2等分線は\(R\)から辺\(PQ\)に下ろした垂線と一致する。
これより、\(\text{辺}BC,CA,AB\)の各垂直2等分線の交点は3角形\(PQR\)の垂心となるので3角形\(ABC\)の各辺の3本の垂直2等分線は1点で交わり外心は存在する。
従って、3角形\(ABC\)が直角3角形の場合も直角3角形でない場合も外心は存在する。

(5)傍心の存在性

内心と同様にすればよい。
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5心(重心・内心・外心・垂心・傍心)の定義と存在性
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